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2019.01.21 - 2019.01.27
広瀬明代 Akiyo Hirose
遙かなる余韻 ー平成元年中国の旅ー


広瀬明代 Akiyo Hirose「


スナップが好きだ。人や街が静止した表情は、そこにある生活を物語るからだ。ときに優しく、ときに切なく。
学生時代、アルバイトで貯めたお金で初めて買ったカメラは中古の一眼レフ。レンズは35ミリ1本。それだけを首にさげて、平成元年の中国を撮影した。平成元年はカメラマン(ウーマンですが)としての仕事をスタートさせた年でもある。中国の写真を発表したいと思いつつ、気が付けばもう平成も終わろうとしている。
30年の年月がたち、細かい記憶はない。現像液の中で浮かび上がる画像が記憶を呼び戻してくれることもあったが、初めて見る(と思えた)光景もあった。記憶なき記録である。記憶とは何と無力なものであろうかと愕然とする。
日々の生活で見るもの聞くものがすべて無意味なものに思える時がある。今を忘れるだろう、そのうち。だから写真に残したい気持ちが人にはあるのだ。あの時、確かにそこにあった事実、感情。時空を超えたネガは、今ようやく語り始めた。