2025.09.22 - 2025.09.28
大川良平
釣具
初めて釣りをしたのは、9歳のときだった。深緑色をした不気味な淵の奥底に仕掛けを投げ入れ、水面に浮かぶウキが水の中に吸い込まれるのを今か今かとドキドキしながら待った。あれから40年以上経った今も、水の向こう側の見えそうで見えない世界に大きな夢を抱き、釣りに出かける。
釣りに出かけた際には、海岸に落ちている釣具を拾って持ち帰ることにしている。釣り人が根に引っかけてしまい、不本意ながらそのまま放置されたものだ。その後、長い旅路を経て海岸にたどり着いた釣具である。よく見ると、釣具店で売られていたときとは異なる姿になっている。波に蝕まれた傷、フジツボの死骸、錆による腐食、剥がれ落ちた塗装。それぞれに特徴がある。その個性に惹かれ、撮影してプリントに引き伸ばした。
これらの釣具は、本来の機能を失った、いわゆる「ゴミ」である。それなのに、宝石のように美しく見える。